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2024/04/27 16:02 |
タマヨリヒメの物語(R15版)
ブレスレッドクリスタルブレスレッド
「トヨタマヒメの物語」続編です。この物語は3部構成になっているみたいで、次はタマヨリヒメの視点から展開します。聞いていると眠くなってしまって、この一章を書くのに三回くらい寝てしまいました。今回は18禁に触れる物語で、省こうか載せまいか迷いました。でも物語を繋げるためには載せないと次につながらないので、アダルトに抵触する部分のみ少し私の手を加え書き変えています。写真のブレスレットは、色石が入っているピンク系の方がタマヨリヒメです。クリスタルだけの色石が入っていない方をホヲリノミコトとしていますが、実際には、タマヨリヒメが使役していた六体の式神です。一番目立つ勾玉部分がホヲリノミコトです。
※R18版を読みたい方は「拍手する」ボタンをクリックし、メッセージにメールアドレスを書き添えてお送りください。いただいたメルアドに送らせていただきます。


優しいあなたの事を裏切るつもりなどなかった。でも私も愛してしまった。
奪いたかった。自分のものにしたかった。何としてでも手に入れたかった。
長い年月をかけてでも、この世から死んでしまった後でも。(タマヨリヒメ)


わたくしにとっての彼は心のよりどころ、支えでした。
初めてホヲリ様のお姿を見た時に、わたくしの胸は張り裂けそうなほど痛みました。
互いに交わし合った視線の中で、互いの中で何かを感じたのです。
ホヲリ様もわたくしも、あの瞬間にトヨタマヒメ様を裏切ることになるだろうと
予見していたのでしょう。

ふっつりと心に芽生える罪悪感。
わたくしはトヨタマヒメ様を裏切ろうとしている。
それは少し、楽しかった。
わたくしはホヲリ様を奪いたかったのです。

ホヲリ様は逞しく勇敢で、わたくしが不安で泣いているときには、いつも励まし勇気づけ、そして支えてくださりました。ご自分の方が辛い運命を背負っているというのにも関らず、ご自分の事を差し置いていつもわたくしたち二人の事を大切に慈しんでくださいました。

深い深いお心を持った方。
わたくしなど目にするのも勿体無い様な素晴らしい、ヤマトの国の王子であられました。
わたくしとトヨタマヒメ様は、ホヲリ様の事情を知ってなお、彼の事を慕いました。

ホヲリ様は裏切りの準備をするためにここ、龍族の島へ足を運んだというのです。
ホヲリ様にはひとりきりの兄上様がいらっしゃり、わたくしとトヨタマヒメ様は何度か兄上様のお話しも聞きました。兄上様とホヲリ様はご兄弟ですが仲が悪く、ヤマトの国の主権をめぐって争われているというお話しでした。父君であられるニニギ様とはお二人とも仲が良いのに、ふたりきりになると決まって「互いにどちらが強いか」で争いになるとおっしゃっていました。

ホヲリ様は争いが嫌いではありませんでした。寧ろ争いに勝つことは国の王子であるご自身の存在を高める事であり、なにより、ご自身がご自身を信じる為には必要なものだとおっしゃいました。

わたくしにとってそのようなホヲリ様のお姿は常に凛々しく、女々しいわたくしを勇気づけてくれるものでありました。

次第にホヲリ様に惹かれ、夢中になってゆく己をなんとしてでも抑えなければなるまいと、わたくしは巫女としてひとり立ちをするためにという理由で、与えられる言付を忙しくこなしてゆきました。お二人からなるべく離れているために、巫女としてのお仕事に没頭してゆきました。そうすればお二人にとってよくない事態をさけられる。わたくしが心を抑え続け、抑え切ることができ、ホヲリ様を男性ではなく、一国の主として見る事ができたなら、わたくしはお二人を裏切ることはないと考えたからです。

わたくしは巫女であるがゆえに未来を知っていました。
わたくしはその未来を何としてでも食い止めねばなるまいと思っていました。


けれどその未来はとうとうやってきました。
わたくしは、トヨタマヒメ様がご懐妊なさり、数日間のみそぎのため母屋に籠り切りとなった際に
ついホヲリ様との逢瀬を望んでしまいました。

それはわたくしにとって夢の様な時間でした。
ホヲリ様はわたくしを抱いてくださったのです。
熱く火照る身体をホヲリ様は優しく抱き締め、女である悦びを教えてくださいました。
ホヲリ様の熱に、わたくしは耐えきる事ができませんでした。

馬屋の奥でふたりきり。
ホヲリ様の熱い身体に組み敷かれながら、わたくしは女の悦びを何度も何度も味わいました。
わたくしは巫女のくせに、男性に身体を許してしまったのです。
なのにわたくしはトヨタマヒメ様に勝ったと、その優越感に浸っていました。

ホヲリ様もわたくしに夢中となりました。
トヨタマヒメ様を愛しながら、わたくしの事も愛してくださったのです。

何度も何度もホヲリ様を求めました。深く繋がりたくて求め続けました。
わたくしを溶かして欲しい。
この時、わたくしの全てをホヲリ様に、この身も心も捧げると決めたのです。

トヨタマヒメ様も愛したホヲリ様。
それをわたくしは一人占めしたかった。
わたくしの為にだけ、ホヲリ様がいて欲しい。
わたくしはトヨタマヒメ様が籠られている間、毎日ホヲリ様に逢いに行きました。
今までずっと秘めて来た想いが溢れ、もはや抑えきれなくなってしまったのです。
急きとめられない濁流に押し遣られ、わたくしは溺れました。
巫女であることなどどうでもよく、ただ一人の女としてホヲリ様を求めました。
そうしながら、神に背く自分自身を愉しんでもいたのです。


わたくしはホヲリ様の生き血を啜りました。
「巫女であるのならばこれがどのような意味であるかわかろう」
ホヲリ様はおっしゃいました。
―――姦淫の罪。
消す事のできぬ、姦通の罪。
わたくしは巫女であるのに男を求め、男に狂い、神の為の身体を穢したのです。

男を求める浅ましい姿を、ホヲリ様は嘲笑いました。
それなのにわたくしはそれを嬉しく思っている。
胸をかきむしって悲鳴を上げ、絶叫したくなりました。
恐れではなくよろこびに。
神を、裏切ってやったのだというよろこびに。

「神ではなく私に仕えよ。罪深き娘」

ホヲリ様、だったのでしょうか。
その時のわたくしには何もわかりませんでした。
陶酔し、深く罪に浸り、それが本物のホヲリ様であるのかどうかすらわからなくなり、
ただ言われるがままに生き血を頂き、その腕より啜り飲みました。
契約であるのだと、ホヲリ様はおっしゃいました。

今であればあれが悪魔の罠であったと気付けるのに、
あの時のわたくしには何もかもわからなくなってしまっていました。
罪に苛まれ、愛する方と身体を重ねるよろこびに溺れ、奪う愉悦に浸っていたために気付けなかったのです。

「わたくしはホヲリ様のお子が欲しい。この身体に深く姦通の罪を残してくださいませ」

わたくしはホヲリ様に願い出ました。
子が欲しい。彼の証が欲しいと願ったのです。

その時の事は今も忘れません。
わたくしは嗤いました。
トヨタマヒメよりこの男を奪ったのだと嗤いました。
嗤いながら、わたくしとホヲリ様の繋がりの結晶をこの世に残せることをよろこびました。

―――そのような時を過ごし、既に何日目かの夜が明けようとしていました。


その日は雨が降り続いており天候は悪く、霧がかって、視界が〝もや〝にかすんでいました。
ホヲリ様はわたくしの社(小社)に訪れ、わたくしを見るなりその強い腕の中に抱きすくめました。
暖かな腕の中でわたくしは喜びに浸りました。

「ここを出て、あなたを連れて島へ戻る」

ホヲリ様は覚悟をなさった顔をし、はっきりとわたくしにそうおっしゃいました。
そうして抱き締めながらわたくしに何度も何度も、謝るのです。

一生かけてあなたをお守りする。あなたの罪は私の罪。
いかなる理由があろうとも私は、あなたの傍であなたに一生この身を捧げる。

ホヲリ様は決断なさった瞳をしてわたくしを見詰めました。
何も心配することはないのだと。
ひとりぽっちで罪を負わせはしないと、わたくしを強く抱きしめてくださいました。

神にそむいた巫女を、許してくださったのです。
堪え続けた不安が洗い流されるような心地でした。
同時に、トヨタマヒメ様への深い深い、どのような表現も無意味な深い心の重みを抱き、
わたくしは泣き続けました。声をあげずに。
涙だけがとめどなく溢れ続けました。

大切な姉の、大切な宝物を奪ってしまうことの罪を、わたくしは死ぬまで己の枷としました。
その枷をホヲリ様は一緒に背負ってくださるとおっしゃったのです。

姉への罪。ホヲリ様への返しきれぬ恩――…二つの枷を両手に嵌めて、わたくしはこの日、
霧の中をホヲリ様と共に龍族の社より抜けだしました。
そして二度とこの地に戻る事はありませんでした…


物語はホヲリの視点で続きます。

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2011/05/25 06:58 | Comments(0) | TrackBack() | ナ・ムー

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