今回リーディングした石はヒマラヤンクリスタルです。
凍土で国を作ったカムイと、カムイを愛したサンという青年の物語です。
カムイとサンは新しい国創りを始める私達を応援してくれています。
『愛し崇める我が主。我らは貴女の剣となり楯となり御身を御守りいたします。』(サン)
【1】出会い
雪が降っている。
冬。大地は硬い氷に包まれて眠る。
カムイ達はその冷たき世界に降り立った。
そこを社にし、そこで生き抜き、そこから新たな国を生み出そうとして降り立った。
「新しき道を開く為、この冷たき土地で暮らそう」
カムイたちは土地を分かち、それぞれの新しき道へと進んだ。
● ● ●
何百年かが過ぎ、凍れる土地には命が溢れた。
サンという名の青年は一人のカムイが生んだ国(街)で命を授かる。
カムイは歳をとらず、シラカンバの樹木に囲まれた社の奥で過ごしていた。
新しい命が降りたという知らせに、カムイはいつものように優しい微笑みで喜びを見せた。
女神(カムイ)の腕に赤ん坊(青年)は抱かれる。
名を授けられた。
サン。
赤ん坊は、新しき世の光という名の意味を持つ名を与えられた。
● ● ●
サンは成長し、弓も槍も使いこなせる、国随一の武具の使い手となった。
若々しく高い士気に溢れ勇猛果敢なサンの評判は、国の中で一番高かった。
サンはカムイを愛した。
あの日、カムイの威を受けた時から、サンの心の中にはカムイのために生きる事だけがあった。
● ● ●
『私は鹿を狩りに行き、雪の大地に足を滑らせ怪我をしてしまったのです』(サン)
冷たい雪に覆われた森林の奥で、不慮の事故により血を流し倒れたサンの元へ、白い装束を纏ったカムイの少女が現れた。
サンは朦朧とした意識の中で彼女の優しい手から、光が溢れだすのを見ていた。
びょうびょうと吹き荒れる雪。
唸る様に揺れる樹木。
その中で、カムイの少女は、別世界にあるかのように静かだった。
「生きなさい。あなたに命を授けた神のために」
少女の唇から、大人びた神聖な言霊が降ろされる。
サンは、その声を聞いた瞬間に少女に恋をした。
暖かい光に包まれながら、サンは決意する。
この方の為に生きよう。
この方の為に命を捧げよう。
目が覚めた時、サンは生きている喜びと、荒れ狂う白い吹雪の中で見た少女の事を想って胸が熱くなるのを抑えきれなかった。
● ● ●
少女がこの街の「カムイ」であることを知ったのは、それから間もなくのことだった。
シラカンバの森林の奥にある社に彼女がいる事を知り、サンは権威ある者達にみつからないよう、こっそりと彼女に会いに行った。
彼女に会う事は禁忌とされ、人々の誰もがシラカンバの森の奥へ近づくことを許されていなかったからだ。
踏みしめる足もとで雪が鳴る。
歩いている間、またあの少女に会えると思うと、気持ちの高なりを抑えきれなかった。
―――しかし、シラカンバの森の奥にある社は、みつからなかった。
サンは、それから何度もシラカンバの森の中を彷徨ったが、とうとう見つけることができずに、幾日もが過ぎた。
「会いたい」
サンの心の中にある気持ちが膨れ上がる。
想っていれば会えるのだろうか。
サンの心に彼女への想いが消えないまま、それから何年もが過ぎた。
【2】羊蹄山の裾野で
サンは大人になった。
結婚し子が生まれ親となり、人々の守り手として活躍した。
サンがカムイの少女に出会った最初の日から数年が経っていた。
穏やかな春の日差しが降り注ぐ羊蹄山の高地で、サンは再び彼女を目にする。
羊蹄山の裾野から大地を眺めるカムイの少女は、大人になっていた。
● ● ●
サンとカムイは偶然、そこで再開した。
サンは薬になる草花を探して、街から離れた羊蹄山まで足を伸ばした。
そこに、あの日見た少女が、佇んでいた。
それがあの時の少女だと判ったのは、白い装束と長い髪、額を覆う飾りが、あの日見た物と同一だったからだ。
「カムイ様…」
サンは、名を呼んだ。
震える声だった。
長年探し続けた想い人。
膝をつき、両手をつき、崇める様にサンは額を地面につけた。
泣いていた。
なぜ涙が出るのかはわからなかった。
ただ、
ただ、ただただ、喜びだった。
「ずっと貴女をお探ししていました」
もう、少女と言うには成長しすぎた、女神に等しい姿をしたカムイが、サンへ顔を向けた。
穏やかに、唇を閉じたまま笑んでいた。
おだやかに優しい風が二人の間を吹き渡る。
どれほどの時間、サンはそうして泣いていたのかわからなかった。
ふと気付くと、女神はサンをもう見てはおらず、前方にある広大な風景を見詰めていた。
「カムイ様…?」
『戦が始まります。この土地もやがては争いの火種を生みましょう。そうなった時、あなたは戦いますか?』
サンは眉を潜めた。
カムイはサンに視線を向けて、泣くとも笑うとも言えない表情を見せた。
白い装束が、風に靡いている。
大きな数珠を持った手。
勾玉の飾り。
小さな神鏡をいただく額飾り。
青色の瞳。
「カムイ様…」
『サン。あなたは私と共に戦い、私と共に生き、私と共にこの土地を守り、そして死ぬ覚悟がありますか?』
「…もちろんです。私はあの日、貴方に命を分け与えられた。あの日から、あなたの為に生き、あなたの為に命を捧げると誓ったのです。この大地の神々に」
カムイの女神はサンを慈しみ深い目で見詰めた。
その視線は、サンの魂を包み込む程に深く、まるで柔らかい羽に包むかのように優しい。
慈悲という感覚を、この時サンは初めて知った。
【3】別れ
そしてまた冬が来た。
酷く寒い夜だった。
カムイは、じっと吹雪の音に耳を傾けていた。
その音の中に混じる悪意を感じとり、表情に諦念の色を浮かべた。
「戦が始まる」
それはいつの世も避ける事のできない、人の欲望の体現。
国を奪い領地を広げ、私服を肥やそうとする者達の暴力の集い。
『関係のない民達が犠牲にならぬよう、壕を掘りそこに隠れましょう』
カムイの腕の中に猫のような小動物が抱かれる。
鈴の音がした。
● ● ●
サンはカムイの指示を持ち、村からなるべく遠く離れた場所に、避難壕を掘りそこに人々を匿わせた。
「カムイ様。準備は出来ております。私たちはいつでも、貴女と共に戦へ出向く覚悟です」
『ありがとう、サン。私はこの国の長としてあなたがたを守ります』
緊迫した状況の中でもカムイは美しかった。
零れ落ちる言葉が、まるで透き通った音のように耳に響く。
その姿は美しく、どんな邪悪にも染まらず、誇り高く清廉だった。
鳴り響く音の様な言霊は、村人の心を震わせ、時に鉛のように重く沈ませ、けれど愛に溢れている。
サンにとってカムイは、この大地の神々を束ねる一人の王だった。
カムイの為に生き、カムイの為に死ねるのならば、それはサンにとっての喜びだった。
『サン。共に有り、あなたと共に生きられたこの場所を、わたしは忘れません』
「カムイ様」
『この土地を守ります』
「カムイ様…!」
『あなたを、愛しています。サン…大切なわたしの子』
カムイにとっては、街の者ひとりひとりが大切な子供だった。
生まれてきた命を、生きる喜びに満たされた侭であの世に導くのがカムイのひとつの役目だった。
それが、叶わない。
カムイは何もかもを知っていた。
いずれ国と国を奪い取る争いが起こり、人々は武器を持って戦い、それにより多くの若者が死に、そしてまた新たな国が栄えることを。
繰り返すこの世の過ちを、カムイは何度も何度も見て来た。
『新しき世の光たる子よ。どうか恐れないで。あなたの命が奪われる事を犠牲だと思わないで。あなたは母なる大地が生み出したこの世の宝。新しき世を築く礎となるために生まれた命。わたしと共にあり、わたしと共に行くのです。だからどうか恐れないで、サン』
『私はあなたと共にあります。あなたと共に戦い、あなたと共に人々を守り、あなたと共にこの地で戦い抜きます。私はあなたの心の中に宿り、その身を助け、そして共に死すでしょう』
「私はどのような姿になろうとも、あなたと共にあり、あなたと共に生き、あなたと共にこの世を創る。女神カムイよ。私はあなたを愛しています」
● ● ●
街は焼け、サンは死んだ。
街の為に戦い、カムイを守るために戦い、彼の死は街人の誉となった。
カムイは先陣を切り武器を持って人々と戦ったわけではない。
だが、戦が終わった後、カムイの姿はこの街にもうなかった。
そして二度と、人々前に姿を現さなかった。
羊蹄山はヒマラヤ山脈と同等のエネルギーを内包していて、そのエネルギー体であるヒマラヤクリスタルを手にしたことで、サンはわたしと意識を繋げる事ができたらしいです。
神と等しき存在であるカムイ。カムイはユグドラシルという大きな木から生まれた大地の姿(化身)だとも言っていました。彼女が産み育てたアイヌたちは、水を大変貴重なものとし扱っていた民たちで、羊蹄山から流れ出る水は神の水として重宝され、時に金銭となり人々を潤したようです。今もそうですよね、羊蹄の水。私も小さい頃飲みに行った!
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