【アヌンナキの王、アヌとの物語り】
(記:2010/07/22)
お前がアトランティスをただの伝説の、空想の都市と思わず、
しっかりと思いだしてくれて嬉しい。
本当にありがとう。
つらい思い出ばかりではなかったはず。
もう封印は解けている。思い出せるはずだ。
最愛の伴侶よ。
<1>
彼は6人の神官のうちの一人。
誇り高く愛情深い男。
私を愛してくれたひと。
神官同士の恋愛は禁じられていた。
だから表だって愛し合うことはできなかったけれど、あなた以外の人を考えることはできなかった。
一番近くて遠い人。
禁断の誓い。
禁断の恋。
抱き締めてくれる時も、寂しさでいっぱいだった。
罪悪感、うしろめたさ。
あなたを忘れるために、別の人に恋をしようと努力をした。
クリスタルに関わる人以外。
もうあなたに近づいてはいけない。
掟を破ってはいけない。
最初は面白半分で街に行き、民のふりをして、出会いを求めた。
あなたを忘れるために。
私の素性を知っていて近づいた男に、私の心は傾いていく。
あなたに似ている…ような気がした。
長く美しい髪、高い背、でも、表情は似ても似つかない。
高潔さはなく、卑猥な瞳をした男だった。
私は、その男にあなたを重ねようとした。無理矢理に。
そうすることで、結ばれぬ寂しさを拭おうとしたのだ。
そして、私は、自分のそうした我儘から、相手に隙をつかれて罠にはめられていく。
男と身体を重ねた。燃えるように熱い、快楽の悦びに、私は心が震えた。
こんなにも私をよろこばせる行為がいままでにあっただろうか――…。
来る日も、来る日も、彼との夜が待ち遠しくなった。
あなたの姿をみつけるたびに、避けるようになった。
もう、あなたを愛さなくてもよくなる、そう思うと心の荷が下りたような気分になるから…
堕落してゆく私。
神官としてあるまじき行為に耽り、やがて、私の力は失われてゆく。
表面だけの高潔さを、みな見抜いていただろうに何も言わなかった。
貴方も、何も言わなかった。
ただ、遠くから、私を愛してくれていた。
穢れた私――。
それでも神官の務めは果たしていた。
私の守るクリスタルタワー。 私を案じる者たち。 心配そうな、不安そうな顔。
私は口を閉ざし、感情を閉ざし、表情を閉ざし、まわりの全てから自分を守るために、自分を騙すようになっていった。
クリスタルは全てお見通しだとわかっていても…
崩壊の前日、あなたからの便りが在り、私はあなたのいる場所へと向かった。
私たちがいつも逢瀬を重ねた場所。
あなたは以前と同じように、私の表情を見るなり抱き締めてくれた。
空がとてもきれいな夕焼けだった。
凍りついた自分の心が、溶かされてゆくような心地――
私は、何をしていたのだろう。
こんなにも私を愛してくれる人がいつも傍にいたのに。
私はあなたの腕の中で安らいだ。
疲れ果てた。
目を閉じて、あなたの体温の中に埋もれた。
気を失いそうになるほど、今までの自分を反省した。
穢れた私を、何も言わずに抱き締め続けてくれた。
もう私にはクリスタルを守れない。
あなたの腕に抱きしめられる資格もない。
私は打ち明けた。 あなたは優しく微笑んでくれるだけだった。
「おまえだけではない。他の者もみな同じ――」
だから、みな、何も言わなかったのだ。
それならば、禁じられた掟を侵して、私たち二人の関係を結んでしまえばよかった。
そう後悔する私の事を、あなたは優しく微笑んで見下ろすだけ。
「俺は、消えて残る。 お前はどうする」
突然の選択。
でも、私自身も予期していた。
もう、この国は終わりだということを。
もうこの国は、あの頃のような叡智を持った者たちの国ではない。
「私は、最期までクリスタルを守りたい。――クリスタルへの恩を返すために」
「国は滅び、離れても、いつかまた必ず出会える。私を忘れないで欲しい。最愛の人よ」
「いつかまた必ず…」
アトランティス最期の日。
クリスタルの塔を守る神官たちは、”あえて”気象の調和を乱すために、波動を調節した。
さようなら。
別れを告げることなく、裁きを下すことを許してください。
この国が二度と蘇らぬように――。
海の底に、沈めます。
私は、最期にひとめ貴方に会いたくて、あなたがいる第一の塔に向かった。
崩壊は始まっている。
あなたは結界の向こうにいた。
残ることを選択した貴方。
振り向いた顔を、生涯忘れることはないと思った。
あなたが、決断を迷うなんて…
崩壊する。
崩れ去る。
国が消える。
私たちもまた、この大地と一緒に沈んでいく。
あなたは天上へ、私は海の底へ。
――離れても、いつか必ず出会う。 その日を信じている。
(記:2010/07/22)
お前がアトランティスをただの伝説の、空想の都市と思わず、
しっかりと思いだしてくれて嬉しい。
本当にありがとう。
つらい思い出ばかりではなかったはず。
もう封印は解けている。思い出せるはずだ。
最愛の伴侶よ。
<1>
彼は6人の神官のうちの一人。
誇り高く愛情深い男。
私を愛してくれたひと。
神官同士の恋愛は禁じられていた。
だから表だって愛し合うことはできなかったけれど、あなた以外の人を考えることはできなかった。
一番近くて遠い人。
禁断の誓い。
禁断の恋。
抱き締めてくれる時も、寂しさでいっぱいだった。
罪悪感、うしろめたさ。
あなたを忘れるために、別の人に恋をしようと努力をした。
クリスタルに関わる人以外。
もうあなたに近づいてはいけない。
掟を破ってはいけない。
最初は面白半分で街に行き、民のふりをして、出会いを求めた。
あなたを忘れるために。
私の素性を知っていて近づいた男に、私の心は傾いていく。
あなたに似ている…ような気がした。
長く美しい髪、高い背、でも、表情は似ても似つかない。
高潔さはなく、卑猥な瞳をした男だった。
私は、その男にあなたを重ねようとした。無理矢理に。
そうすることで、結ばれぬ寂しさを拭おうとしたのだ。
そして、私は、自分のそうした我儘から、相手に隙をつかれて罠にはめられていく。
男と身体を重ねた。燃えるように熱い、快楽の悦びに、私は心が震えた。
こんなにも私をよろこばせる行為がいままでにあっただろうか――…。
来る日も、来る日も、彼との夜が待ち遠しくなった。
あなたの姿をみつけるたびに、避けるようになった。
もう、あなたを愛さなくてもよくなる、そう思うと心の荷が下りたような気分になるから…
堕落してゆく私。
神官としてあるまじき行為に耽り、やがて、私の力は失われてゆく。
表面だけの高潔さを、みな見抜いていただろうに何も言わなかった。
貴方も、何も言わなかった。
ただ、遠くから、私を愛してくれていた。
穢れた私――。
それでも神官の務めは果たしていた。
私の守るクリスタルタワー。 私を案じる者たち。 心配そうな、不安そうな顔。
私は口を閉ざし、感情を閉ざし、表情を閉ざし、まわりの全てから自分を守るために、自分を騙すようになっていった。
クリスタルは全てお見通しだとわかっていても…
崩壊の前日、あなたからの便りが在り、私はあなたのいる場所へと向かった。
私たちがいつも逢瀬を重ねた場所。
あなたは以前と同じように、私の表情を見るなり抱き締めてくれた。
空がとてもきれいな夕焼けだった。
凍りついた自分の心が、溶かされてゆくような心地――
私は、何をしていたのだろう。
こんなにも私を愛してくれる人がいつも傍にいたのに。
私はあなたの腕の中で安らいだ。
疲れ果てた。
目を閉じて、あなたの体温の中に埋もれた。
気を失いそうになるほど、今までの自分を反省した。
穢れた私を、何も言わずに抱き締め続けてくれた。
もう私にはクリスタルを守れない。
あなたの腕に抱きしめられる資格もない。
私は打ち明けた。 あなたは優しく微笑んでくれるだけだった。
「おまえだけではない。他の者もみな同じ――」
だから、みな、何も言わなかったのだ。
それならば、禁じられた掟を侵して、私たち二人の関係を結んでしまえばよかった。
そう後悔する私の事を、あなたは優しく微笑んで見下ろすだけ。
「俺は、消えて残る。 お前はどうする」
突然の選択。
でも、私自身も予期していた。
もう、この国は終わりだということを。
もうこの国は、あの頃のような叡智を持った者たちの国ではない。
「私は、最期までクリスタルを守りたい。――クリスタルへの恩を返すために」
「国は滅び、離れても、いつかまた必ず出会える。私を忘れないで欲しい。最愛の人よ」
「いつかまた必ず…」
アトランティス最期の日。
クリスタルの塔を守る神官たちは、”あえて”気象の調和を乱すために、波動を調節した。
さようなら。
別れを告げることなく、裁きを下すことを許してください。
この国が二度と蘇らぬように――。
海の底に、沈めます。
私は、最期にひとめ貴方に会いたくて、あなたがいる第一の塔に向かった。
崩壊は始まっている。
あなたは結界の向こうにいた。
残ることを選択した貴方。
振り向いた顔を、生涯忘れることはないと思った。
あなたが、決断を迷うなんて…
崩壊する。
崩れ去る。
国が消える。
私たちもまた、この大地と一緒に沈んでいく。
あなたは天上へ、私は海の底へ。
――離れても、いつか必ず出会う。 その日を信じている。
PR