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2024/04/20 11:22 |
アヌンナキの王アヌとの物語り
【アヌンナキの王、アヌとの物語り】

(記:2010/07/22)


お前がアトランティスをただの伝説の、空想の都市と思わず、
しっかりと思いだしてくれて嬉しい。

本当にありがとう。

つらい思い出ばかりではなかったはず。



もう封印は解けている。思い出せるはずだ。

最愛の伴侶よ。




<1>


彼は6人の神官のうちの一人。

誇り高く愛情深い男。

私を愛してくれたひと。

神官同士の恋愛は禁じられていた。

だから表だって愛し合うことはできなかったけれど、あなた以外の人を考えることはできなかった。

一番近くて遠い人。

禁断の誓い。

禁断の恋。

抱き締めてくれる時も、寂しさでいっぱいだった。

罪悪感、うしろめたさ。


あなたを忘れるために、別の人に恋をしようと努力をした。

クリスタルに関わる人以外。

もうあなたに近づいてはいけない。

掟を破ってはいけない。




最初は面白半分で街に行き、民のふりをして、出会いを求めた。

あなたを忘れるために。






私の素性を知っていて近づいた男に、私の心は傾いていく。

あなたに似ている…ような気がした。

長く美しい髪、高い背、でも、表情は似ても似つかない。

高潔さはなく、卑猥な瞳をした男だった。

私は、その男にあなたを重ねようとした。無理矢理に。

そうすることで、結ばれぬ寂しさを拭おうとしたのだ。

そして、私は、自分のそうした我儘から、相手に隙をつかれて罠にはめられていく。




男と身体を重ねた。燃えるように熱い、快楽の悦びに、私は心が震えた。

こんなにも私をよろこばせる行為がいままでにあっただろうか――…。


来る日も、来る日も、彼との夜が待ち遠しくなった。

あなたの姿をみつけるたびに、避けるようになった。

もう、あなたを愛さなくてもよくなる、そう思うと心の荷が下りたような気分になるから…


堕落してゆく私。

神官としてあるまじき行為に耽り、やがて、私の力は失われてゆく。
表面だけの高潔さを、みな見抜いていただろうに何も言わなかった。


貴方も、何も言わなかった。


ただ、遠くから、私を愛してくれていた。

穢れた私――。



それでも神官の務めは果たしていた。


私の守るクリスタルタワー。 私を案じる者たち。 心配そうな、不安そうな顔。

私は口を閉ざし、感情を閉ざし、表情を閉ざし、まわりの全てから自分を守るために、自分を騙すようになっていった。


クリスタルは全てお見通しだとわかっていても…



崩壊の前日、あなたからの便りが在り、私はあなたのいる場所へと向かった。


私たちがいつも逢瀬を重ねた場所。


あなたは以前と同じように、私の表情を見るなり抱き締めてくれた。

空がとてもきれいな夕焼けだった。

凍りついた自分の心が、溶かされてゆくような心地――



私は、何をしていたのだろう。

こんなにも私を愛してくれる人がいつも傍にいたのに。


私はあなたの腕の中で安らいだ。

疲れ果てた。

目を閉じて、あなたの体温の中に埋もれた。

気を失いそうになるほど、今までの自分を反省した。

穢れた私を、何も言わずに抱き締め続けてくれた。



もう私にはクリスタルを守れない。


あなたの腕に抱きしめられる資格もない。


私は打ち明けた。     あなたは優しく微笑んでくれるだけだった。


「おまえだけではない。他の者もみな同じ――」


だから、みな、何も言わなかったのだ。


それならば、禁じられた掟を侵して、私たち二人の関係を結んでしまえばよかった。

そう後悔する私の事を、あなたは優しく微笑んで見下ろすだけ。



「俺は、消えて残る。 お前はどうする」


突然の選択。

でも、私自身も予期していた。

もう、この国は終わりだということを。

もうこの国は、あの頃のような叡智を持った者たちの国ではない。


「私は、最期までクリスタルを守りたい。――クリスタルへの恩を返すために」


「国は滅び、離れても、いつかまた必ず出会える。私を忘れないで欲しい。最愛の人よ」

「いつかまた必ず…」




アトランティス最期の日。

クリスタルの塔を守る神官たちは、”あえて”気象の調和を乱すために、波動を調節した。



さようなら。


別れを告げることなく、裁きを下すことを許してください。


この国が二度と蘇らぬように――。

海の底に、沈めます。







私は、最期にひとめ貴方に会いたくて、あなたがいる第一の塔に向かった。

崩壊は始まっている。


あなたは結界の向こうにいた。


残ることを選択した貴方。

振り向いた顔を、生涯忘れることはないと思った。

あなたが、決断を迷うなんて…




崩壊する。

崩れ去る。

国が消える。

私たちもまた、この大地と一緒に沈んでいく。


あなたは天上へ、私は海の底へ。


――離れても、いつか必ず出会う。  その日を信じている。


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2012/04/05 23:19 | Comments(0) | 神様たちの物語

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